産業保健師になり、さまざまな場面で「こんな技術があればもっとスムーズに仕事ができるのにな」と思うことが多々ありました。(もちろん簡単に身につく力ではなく、経験を重ねたり時間をかけて習得していくスキルもありますが・・・)
ここでは私自身の経験から産業保健師に求められる感じたスキルをまとめていますので、ご参考になれば幸いです。私の主観なので、もちろんこの他にも大切で重要な技術がたくさんあります!
聞く力、話す力
まずは聞く力、話す力、すなわちトーク力です。
「何を当たり前のことを・・・」「普通に会話ができれば大丈夫でしょ・・・」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、これを侮ってはいけない・・・!(笑)
産業保健師の仕事の「保健指導」では、健康診断結果をもとに、従業員の方のお話をきいて生活習慣改善に向けてアドバイスを行います。
「生活習慣」というのはその人の日常であり、その習慣が形されるに至った背景があります。中には踏み入った質問が必要となる場面もあります。
産業保健師である私たちに、自分の私生活を話したくないと感じる人も少なくありません。
誰だって、仲良くない人に自分自身のことを話すのには抵抗がありますし、健康診断結果で自分の悪い行いに心当たりがある、なんて時はなおさらです。しかし、それではいつまでたっても表面上の話ばかりで終わってしまい、その人の生活習慣や考え方に働きかけることができません。
「この人には自分をさらけ出せる」とまでは言いませんが、「自分のことを話せる、話したい!」と思ってもらう必要があります。
- 雰囲気づくり
まずは「自分は医療の専門職で、あなたを支援する味方」であることをわかってもらうことが大切です。自分の性格や強みを生かして、自分ならでは話し方、打ち解け方で雰囲気づくりをしていきます。相談しやすかったり、親しみやすい印象を持ってもらえることが大事かと個人的には感じています。 - 質問力
面談をしている中で、質問をしたのに自分が聞きたかった情報が得られなかったり、他の話が長くなりその話になかなかたどり着けなかったり、なんてこともあります。聞きたい情報を確実に聞き出すために、話の流れやタイミングを考慮しながら、なんて聞けば欲しい答えが返ってくるのか想像して質問することが重要です。 - アセスメント力、提案力
話を聞いているだけでは保健指導ではありません。聞いたうえで、私たちは専門職として助言をして支援をしなくてはなりません。対象者から聞いた話を自分で要約しアセスメントを行い、その上で「では、こうしてみるのはどうですか?」と提案する力が必要です。もちろんその人が実施できる、可能と思える内容であることが求められます。 - 伝える力
これが一番難しい・・・!単純に「あなたはここが悪いので、こうする方が良いです。」といっても、当たり前ですが「はいわかりました。」とはなりません。従業員の方にどんな背景や思いがあってその生活習慣が形成されたのか汲み取りながら、どうにかこうにか響くようにお伝えします。数値的なデータを用いて理論的に説明することが効果的な方もいますし、イラスト等をみせることで危機感を抱くきっかけになる方もいます。人それぞれでもあるので、その人に響きそうな方法でお伝えする能力が求められます。
何となくですが、営業マンのように「健康」という商品の魅力を上手に伝え、買ってもらえる(理解してもらう)ようにお話しをしているイメージです。
幅広い知識/会社の知識
働いていると、様々な方の健康相談を受けることもあります。
「最近膝が痛くって・・・」「食事をしたあとにお腹が痛くなるんだけど・・・」など、ジャンル問わず質問をされます。病院でいう外来的な感覚です。
基本的に病院で検査をしないとわからないことがほとんどであり、保健師は医者ではないので判断もできません。なので、病院受診を促すことが確実にはなりますが、その時に症状や訴えから緊急性を判断することが求められます。
腹痛一つでも考えうる疾患は様々であり、場合によっては緊急を要す可能性もゼロではありません。
様々な分野知識が必要になります。しかしそれらすべてを突き詰めて勉強するのは無理な話です。
そのため言われた症状などから何が原因か考えられて、どう動いた方が良いか伝えられるようにしておくことがベストかと思います。
また、特に病院でしか勤務経験がない方は、ビジネスマナーと一般的な会社の組織図を理解しておくことがベターかと思います。(病院って本当に特殊な場所で、一般的な会社と全然ちがう・・・!)
産業保健師は会社の多くの方との連携が不可欠なので、部署や地位など理解しておくことで、誰にどんば情報を渡せて、誰に動いてもらうことが必要かが判断でき、仕事がしやすくなるかと思います。
わからないことを聞かれたときは、きちんと従業員の方にもそう伝え、ケースによっては病院受診をすすめましょう。その後その症状や疾患について勉強しひとつずつ知識を重ねていくことが重要かと思います。
簡単なパソコン操作
デスクワークが多い仕事なので、一通りのパソコン操作ができると仕事もスムーズになります。
エクセル、ワード、パワーポイント・・・。
本当に最低限で大丈夫ですが、その最低限は使える方が良いです。
面談時に使用する資料を作成したり、会社から依頼されたセミナーのパワポなど作成することがあります。メールのやり取りも行いますし、手紙を作ったりもします。
私は機械音痴で、最初は本当に苦労しました・・・(笑)
ビジネスマナーも理解しておく必要があるので、その点も大変でした。
めげない心
やっぱり大事なのは、くじけないメンタル。
・・・決してふざけてるわけではありません。(笑)
保健指導は効果がみえにくいとよく言います。
特定保健指導を行っていても体重ってすぐに落ちるものではないし、症状もすぐに改善するものばかりではありません。
自分がやっていることに意味があるのか不安になったり、従業員の方からも同様な意見を言われることもあるかもしれません。やりがいを感じられずに、気持ちが滅入ってしまうこともありますが、それにめげない気持ちが必要です。保健指導ってそういうもの、と割り切る気持ちも必要になるかと思います。
間違いのない情報・やり方であればきちんと効果が出てくるはずです。
従業員の方が、実践していないのに「頑張っている」と嘘をついていることもありますが・・・
まとめ
というわけで、私自身が考える保健師に必要なスキルを挙げました。
これ以外にももちろん様々な能力が必要です。仕事をしていて、毎日自分の無力さを嘆くばかりです・・・。しかし、日々少しずつスキルアップを図っていき、少しずつ従業員の方の健康を支えていけたらバッチリなのではと個人的には思ってやっています。
もちろん得意、不得意もあると思います。慣れや経験が必要になることもあります。それらも踏まえて、自分に向いてそうか、頑張れそうか、ご検討いただくのが良いかと思いますので、ご参考になれば幸いです!
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